阿湖姫の性格がとてもいいことは、思いやりのある言葉使いから、よくわかります。
逃亡していて倒れている唯之助に水を差し出したり。
山を走る唯之助を「たのもしいのう」と言ったり。
名前を名乗らない唯之助を「なんとおくゆかしい」と言ったり。
若君様と初めてお目通りしたときに、さんざん待たされておきながら「心より案じておりました」と言ったり。
若君の様子を見に行くよう、唯之助にお願いする侍女を制し、唯に「そのようなあさましい真似をしなくともよい」と、自分の立場そっちのけで凛と振る舞ったり。
とにかく、ポジティブ思考というか、本当に非のうちどころがないと言ってもいいくらい、性格の良いお姫様です。
さて本題ですが、なぜ阿湖姫の性格がここまでいいのでしょうか。
その理由。
アシガール10話。
若君が松丸義次に頼みに行ったあとの、阿湖姫との会話。
阿湖姫「唯之助、いえ、唯のこと、私もなんとしても無事にと。
命を救ってもらったというだけではありません。
私は唯が好きなのです」
若君「阿湖殿...」
阿湖姫「唯をもう一度、若君様に会わせてあげたい。
唯のことを、誰よりも心から思うておられる若君様に。
唯をお助けください。私のこと、お気になさらぬよう」
と、若君が唯を想っていることを察し、みずから身を引きます。
もし、阿湖姫が普通の姫であれば、このような思いやりにあふれた言葉が出てきたでしょうか。
間違いなくこのような展開にはならないはずです。
また、仮に普通の性格の姫が、突然「私のことはお気になさらずに」と身を引くのも不自然ですよね。
つまり、阿湖姫の性格がいいのは、この場面のためだったわけです。
それまでの唯や若君様に対する振る舞いは、この場面のための、とても長い伏線であるように思えて仕方ないのです。
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