唯の「こんなもんが定めなはずない!」(5話)

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アシガール5話。

矢で胸を射抜かれ、瀕死の若君のところへ現れる唯。

 若君「なぜであろう、お前が来るような気がしていた」
 唯「若君様...私が和議をすすめたりなんかしかたら」
 若君「決めたのは儂じゃ...」

そして涙を浮かべながら若君をみつめる唯。

 若君「泣くな...これも世の定め...」
 唯「こんなもんが定めなはずない!」

この、唯の「定めなはずない!」という言葉。

何回リピートしても感動する場面です。

普通のドラマでもよくあるシーンなはずなのですが、アシガールのこのシーンはなぜか人を惹きつけて止まない魅力があるようです。

その理由を考えてみました。

若君はこの時、自分はもう助からないと自覚していたはずです。

終わりのない戦が繰り広げられる戦国時代。

いつ、どこで死んでもおかしくないことが当たり前の世の中。

だから「世の定め」と諦めたんだと思います。

でも、平成という平和な時代からタイムスリップしてきた唯には、人を殺し合う戦国の世は、ある意味狂っているとしか思えなかったはず。

一生懸命働いて、笑ったり、泣いたり、楽しく生活できるのが当たり前。

だから、こんなことで若君が死ぬのが「世の定め」とはとても思えなかったんでしょうね。

また、この台詞を唯ではなく、同じ戦国の誰かが言ったとしたら、ここまで心に響くでしょうか。

たとえば阿湖姫が、

 「このようなことが定めなどとは思えませぬ!」

と泣きながら言ったと仮定します。

多分、唯ほどの説得力は感じられないかもしれません。

むしろ、若君の言葉に何も言い返せない方が自然ではないでしょうか。

それは阿湖姫が若君と同じ時代の人間だから。

でも唯は平和な平成の世を知っています。

だから、逆に自然体で、

 「こんなもんが定めなはずない!」

と、若君の言葉を強く否定できたんでしょうね。

時代を超えてやってきた唯の言葉だからこそ、ここまで深く心に響くのではないでしょうか。

現代に生きるアシガール・唯が、私たち視聴者を代弁して、若君に平和な世があることを伝えてくれているような、不思議な錯覚に陥ります。