若君が総領を兄上に譲ろうとした本当の理由(9話)

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アシガール9話。

忠清と成之の会話。

 忠清「もしこの戦に勝利し、我ら羽木家が新しい年を迎えた折には、
    羽木家の跡目は兄上にお譲りしたいと」
 成之「なんだと...」
 忠清「この城と、父上をお頼み申します」

なぜ、若君は総領の座を兄上に譲ろうとしたのでしょうか。

9話の中で、若君はその理由を父・忠高にこう告げています。

 「夢を見たのです。戦のない世の。
  親と子が、兄・弟が睦まじく暮らす、のちの世の夢でござる。
  ただ一人のおなごをめとり、子をなし、穏やかに暮らし...」

本当に、これが総領の座を譲ろうとした理由のすべてでしょうか。

他にも理由があるのではないかと思います。

個人的には2つの理由があると思います。

まずひとつめの理由。

冒頭の会話は、8話で若君が唯之助から兄上の策略を知った後に続く場面です。

若君は、成之が自分を殺そうとするのは、おそらく総領の座を奪いたいためと思ったのではないでしょうか。

であれば、総領の座を譲れば、兄もそのような謀反を企てることはしなくなるだろうと。

もうひとつの理由。

8話で、若君は唯之助が成之の部屋に抱えられていったことに嫉妬します。

このとき、若君は唯の自分に対する本当の気持ちはまだ知りません。

おそらく唯は、自分のことを「守りたい」と思っているだけだろうと。

若君は、自分だけが唯のことを想っている、つまり片想いなのだと。

でも唯が「若君が鐘ヶ江のところにいくのやだ」と言ったことで、唯の自分に対する想いに気づきます。

ただ若君は、唯が平成に戻ると、二度と戦国に戻ってこれなくなることを知っています。

若君は、唯が平成に戻る前、阿湖姫との婚儀を延期しています。

が、唯の気持ちを知ったことで、若君の唯への想いがさらに深くなり、阿湖姫との結婚は延期ではなく、結婚しない道を選んだのでしょう。

結婚しないということは、跡継ぎとなる子を生む必要がある総領として相応しくありません。

したがって、兄・成之に総領の座を譲ろうとした、ということではないでしょうか。

8話で若君が唯に告げた、

 「兄のことは...考えている」

というのは、そういうことではなかったのかと思います。